ivataxiのブログ

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白血病 カットマン

1996年当時「白血病」は、難病だった。10年程髪を切ってもらった「カットマン」は、10歳年上の背の高い男性。無口でたまに口を開けば、顔に似合わぬきつい言葉。だから無口くらいがいい。カリスマという奴。「先生」と、呼ばれ彼を指名のお客さんはあとをたたない。しかも、休日は趣味の山登りを相棒の男性と過ごすので体は休まらない。「大丈夫かな」とは思った。ある日、お店の方から「先生が入院された」という電話。お見舞いに。古い病院の一番隅の病室。「白血病」と聞いた。良くわかないが大変なことがおきたと思った。彼とは何度も一緒にグループ展をした。カメラが得意で写真で参加。でも病室では抗がん剤投与で意思が集中できないのか、ハガキサイズの色鉛筆画を数枚。カレンダーを見ながら「展示はいつでしたか」という。展示を待たずに彼は亡くなった。グループ展の最終日。誰もお客さんが来ないから、早じまいしようと立ち上がった。誰もいないのに、ぼくは何かの圧力でイスに押し戻された。「彼がここに来ている」と納得。誰も来なくても最後までぼくは展示会場に残ることにした。