ivataxiのブログ

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不幸なヒラメ

 

ヒラメとカレイは似ているが、目が寄ってついている側面が違うようだ。水の底に腹をつけて水面を見ている生き様は「上役しか見ない中間管理職」と似ている。だが、一匹の不幸なヒラメがいた。そのヒラメは目の付いた側面を常に下に向けて生活していた。だから水面からふりそそぐ柔らかくきらめく陽光を知らずに来た。不幸な一匹のヒラメは食うや食わずで一生を閉じた。誰もそのヒラメの死を知らない。
いや、そうでもない。
ヒラメは生前、自分より下の者たちにとても良くしていたのだ。
水辺のささやかな生活をする、弱い生き物たちは、そのヒラメの死を知って集まった。一匹ずつを採っても大したエサにもならないから、どの魚もそんな小さな生き物の集まりは無視した。小さな生き物たちは、自分たちを守ってくれたヒラメのことをただ悲しんだ。そんな気持ちの集合が、その日の海を伝わって、悲しい波が伝わった。