ivataxiのブログ

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ブルータス

ブルータスの石膏像
3年制の専門学校(多摩芸術学園・溝口洗足学園隣にあった)を2年生の秋にふらぁ~っと中退した。最初に住んだ新丸子から上野毛の引越しを、友人とリヤカーで4月にしたばかりなのに、8月には家賃が払えず埼玉県新座市の親戚の元に転がり込んだ。バイトも辞めて御茶ノ水美術学園(オチャビ)夜間デッサンに通っていた。(翌年から大学に通うことになるので安心してね)上野毛から埼玉へは、手で荷物を電車で何度か運んだ。幸い荷物が少なかった。新座市の親戚の家は、西武池袋線大泉学園」乗り換えのバス終点だった。当時の大泉学園には画材屋さんがあり、いつもそこを通るたびに見る「ブルータスの石膏像」が、どうしても欲しくなった。その頃の一ヶ月分の仕送り相当の金額で、貧乏浪人生には高価過ぎる・・と、あとになればわかることだ。だが、当時はデッサンしか頭の中にはなかった・・またもや、ふらぁ~っと買ってしまった。すでにかなり始末した生活だが、さらに困窮することになった。インスタントラーメンの味に詳しくなった。懐は寒いのに、なぜだか心は満足感で充満していた。参宮橋で劇団四季に近いという理由で住んでいた友人が「ダンスの仕事で日本を離れるから、代わりにここに住まないか?」と、持ちかけて来た。家財道具一式を、やはり仕送り一月分で商談成立した。それまでの引越しは荷物が少なかったのだが、石膏像が電車では運べず、お金もない・・。その旨を画材屋さんに伝えると、店のトラックを店主の方が運転して無料で引越ししてくれた。こちらから「お金を払います」ともいえず、店主の方もこちらの財布の中が見えたのだろうか?「石膏像・・買ってくれたからね・・」と、無報酬の親切に、逆に言い訳さえ残して帰った。まだ、そんな人情が残っていた頃のお話でした。