ivataxiのブログ

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ギンガム

ギンガムチェック あしながおじさん
たとえば薄いピンクの格子柄が重なった部分だけが濃いピンクになるという簡単な布の模様・パターンのことを「ギンガム・チェック」という。中学か高校の英語の教科書に載っていた「ダディー・ロング・レッグ」を「あしながおじさん」と訳すようで、その授業は嫌いだったのだが「足長」という部分が自分にない長所という点でひっかかり、図書館で和訳の「あしながおじさん」1・2を借りた。主人公ジュディー(ジェルーシャ・アボット)という孤児院の少女が、姿は見えないが影が足長のクモのように見えた男性の援助を受けて進学の夢を実現するという内容。そのかわりに「学園での様子を定期的に手紙で知らせる」というただそれだけ。手紙のやりとりで彼女の学園生活がかいま見えるのだが、当時、日本の高校生だったぼくは見知らぬ外国を想像して楽しんだ。その孤児院の制服が「ギンガム・チェック」で、彼女はとても嫌っていた。
ぼくは高校を出て、神奈川の専門学校を二年の秋に中退し、埼玉のおじの家に転がり込んだ。すぐに御茶ノ水美術学院の夜間デッサン科に通うことになるのだが、その頃、ピンクのギンガムチェックのシャツをなんとなく買った。
その後大学に通うようになった翌年から専門学校時代に住んでいた町の薬局でバイトをすることになった。まさか4年間も続くとは最初は思っていなかった。その薬局のご主人がとても長い足の人だった。
もうすっかり大学を卒業してからの人生の方が長いのだが、母親に「あの頃、薬局のご主人にはすごく援助してもらったんやで」と、今更ながらいわれた。「そうか・・彼はやはり、あしながおじさんだったんだ」と、今頃思うのだった。