ivataxiのブログ

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「生きる」しか、見ていない

残念ながら、有名な黒澤監督の作品は「生きる」しか、見ていない。志村喬さん演じる「渡辺かんじ」という市役所勤務の男が主人公。あたりまえに市役所勤務をしていたが、自分がガンにかかっていることを知る。飲めない酒に浸ったり、無理に楽しもうとしても、長年の地味な生活の繰り返しの習慣の中・・なかなか楽しめない。ふとしたきっかけで若い女性のストッキングの穴に気づく。当時、高価だったストッキングをプレゼントして仲良くなる。彼の奥さんは早く他界したようで、一人息子夫婦との同居もストレスが高まる。「いい年をして」とか「老いらくの恋」などと、ささやかれる。若い女性は、これからの人生を生き、主人公はこれから死んで行く・・という複線が、階段を上る、降りる・・というだけのシーンで表現されている。随所に、説明的な描写があり、くどくもあるが、当時としては物の見方はしっかりしている。派手なビジュアルは一切期待できないし、SFXもない。演劇を白黒で見る感じと、覚悟して欲しい。「命短し、恋せや乙女」という、古い歌・・ブランコに一人揺られる主人公は、しゃがれた声で、低く歌う・・。翌日から、彼は生まれ変わる・・市役所の緩慢な業務の中に、彼の仕事ぶりの変化が光る。見れば、新しい帽子・・「新しい考え方」を暗示しているのだろう。壁に当たった時、時間があればじっくり自分の人生を考える一助になるかも?