ivataxiのブログ

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蘇生前 心無い人々

全身麻酔の手術中にタマシイが肉体から離れてどのくらいの時間が経ったのだろう?「もうこのまま肉体に戻らなくても良いかな?」とどこかで思い始めていた。きっとその方が楽な気もしていたのだ。それまで観たあの世とも呼ぶべき世界はどちらかというとしっとり重く・冷たい・暗い世界だった。だがやがて乾いた・明るい・暑い世界に変わって行った。そこ「ダリの絵」で観たようなシュールレアリズムな世界でつじつまが合うようなそれでいて現実社会とも違うような風景だった。そこで体が戦車になってポッカリと心が空洞になった人に出会うことになる。その人は「今肉体は地上で戦争をしているのだが心を持ったままではとても戦争なんて残酷なことは直視できないから心だけをここに置いている」のだという。他にもたくさん心を置いたまま地上では心無い状態の人々がいるようだ。ぼくにとってその世界はとても退屈ですぐにいやになった。・・・・少しして目を開けてみるとうまく肉体と魂が合体したようだった。イヤイヤをするみたいに無理やり目を開けた。たくさんのチューブ・電線などが体と機械を結びつけている。緑色の酸素マスクがいやな匂いで苦しくてすぐにはずした。すると看護婦さんがすかさず「まだつけていてください。自分では呼吸できないですから」という。少し目を閉じるとまた落ちて行きそうだ。そこには家族がいる。疲れ果てていて悲しい表情の女性だ。どこかで見た顔だが・・それは奥さんらしかった。ぼくは手術のあとずっと意識がなかったようだった。24時間という医療のタイムリミットを少し越えてしまい担当医師たちとしても困った状態だったのだとか。でもなんとかこちらの世界にまた戻って来てしまったようであった。