ivataxiのブログ

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時空の穴

代々の骨とう品の中にあった物だが、何の価値があるのかわからない。恐らく恐竜の時代に琥珀に封じ込まれたのだろう。形が現代でいうなら「眼鏡」のようにも見えた。ともかく琥珀から削り出してもらった。やはり、眼鏡にしか見えない。幸い少し視力も衰えていたから、眼鏡屋さんにレンズだけでも使えるか試してもらった。見えた。特に視力の調整には無関係だが、ともかく見えることは見えた。でも、少し見え過ぎる。おかしな物も見えるのだ。幽霊とかではなく「穴」が見える。どこかを歩いていると、そこにはないはずの穴が見える。歩いていて、その穴を避ければ何も起こらないのだが、あおの穴に入ると、どこかに行ってしまう。例えば学校に行こうとするが、穴を通れば早く行けたり、逆に飛んでもない場所に出て後悔したりもする。最初はいたずら程度のそんなレンズだろうと思っていた。やがて、二次元の横移動だけでなく、縦方向の穴でも使えることがわかった。屋上から落ちても、空間に空いた穴に入れば、安全な場所に瞬時に移動できたのだ。いわゆる「テレポーション」という奴だ。でも、それだけではない。なぜ恐竜の時代に現代「眼鏡」と見て取れる物が、琥珀に入っていたかがわかる時が来た。その眼鏡では「時空の穴」も見えるようだった。普通に空間移動とは違う「予感」があり、その穴の先のイメージがどこからか「来る」あるいは「ある」のだった。植物をたくさん積んだトラックに乗っていたが、そんな予感の先にその穴は立ちはだかった。普通なら「トンネルを抜けるとそこは雪国だった」的なトンネルなのだが、そのトンネルを抜けるとそこは違う時代だったりもする。植物を積んだトラックは、乾燥した土地についた。どこかはわからないが、月が空にあったからここは地球だろう。それにしても殺風景で、ビルなんてないし、人もいない、一応空気は呼吸できるので良かった。ここにトラックと植物を置いて、別な穴に入ると元の時代に戻れた。「このあと、大量の雨が降る」という予感があり、その雨の力で、地上にその植物の子孫がどんどん増えるという、そんな感じがあったのだ。どうやら、恐竜より前の、地上に植物がなかった時代に行ってしまったようだ。その雨はいわゆる「ノアの箱舟」以前の大量の雨だったのだろうが、地球の近くを通った「彗星」か撒いて行ったか、月の水分を地球が吸い取ったのか、そこまではわからない。困ったのは、時間だけではなく、違う惑星まで行ってしまえることに気づいてしまったことだ。移動はかわまないにしても、人間寿命は決まっている。火星や月や、違う銀河系にも行ったが、やはり地球が良い。もうずいぶん年を取って、眼鏡をかけても穴が見えなくなりつつある。「最後のリープだ」そう思った。そこは、恐竜の時代。地球は少し引力が少なく、ぼくも巨大な体になった。眼鏡はどこかに落としてしまった。ぼくは大きな体で恐竜たちと対等に戦って、生きることにした。眼鏡はのちに琥珀に密封されて、未来に発見される。そんな予感があった。