ivataxiのブログ

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自転車屋のおじさん

最近、自転車で早く走るなんて生活はしていない。1996年前後に友人が組み上げてくれたマウンテンバイクがきっかけで、変速機付き自転車という物に初めて触れた。でも、ただ乗っているだけなのがつまらなくなり、レースに出ようと思った。「マウンテンバイクでもOK」と、デュアスロンの案内にはあった。でも「オンロードとマウンテンバイクではだいぶ違いますよ」と、若い自転車屋さんの友人にいわれるままに鉄の安いオンロードバイクを購入。炭素素材などの値段の高い物は買えないから、自転車屋さんの微妙な調整に頼ることになった。その店のオジさんは、ニコニコとぼくのくだらない注文にもちゃんと答えてくれた。マウンテンバイクのオフロードのタイヤがツルツルになって、街乗りのタイヤ(マルチパーパス?クロスカントリー?)に交換してもらった。しばらくオジさんは何もしないで減ったタイヤの表面を見てニヤニヤしていた。「ここまで使ってくれたらタイヤも本望だろう」と笑った。オンロードもレース用のタイヤはあまり消耗させたくないから、普段の練習用タイヤを作ってもらった。重く頑丈で道との接地面が広くスピードは遅いのだが、どこでも気楽に走れる走破性に愛着があった。たった一度しか出場しなかった千本浜のトライアスロンでは、短いコースなので、一番高速のギヤを交換してもらった。くだらない仕事だと思うのだが、こんな若造に「これは無駄だと思う」と真剣に意見して、でもいった通り直してくれ、後でまた元に戻してくれた。一番大きな前のギヤと一番大きな後ろのギヤは同時に使うことはなく、チェーンが足りないから物理的にも無理なのを実際に見せて説明してくれた。2008年以来ドクターストップで自転車はママチャリだけとなった。以来その自転車屋さんにも行かなかったのだが、最近人づてにそのオジさんが亡くなったことを聞いた。作業中は顔を自転車に近づけるからか、とてもツバの短い帽子をかぶり、油の付いた手と作業服でいつもニコニコしていたオジさんの姿がよぎった。