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ケンメリ

ケンメリというクルマがあった。メリケン粉にも似た発音だ。「愛のスカイライン」というバズの曲がテレビで良く聞かれた。当時はまだ免許もなかったし、クルマに興味もなかった。大学時代は薬局でバイトしていたが、そこのご主人が乗っていたのが「ケンメリ」だった。クルマのことはわからないが、妙にカッコ良かった。そのご主人はアメリカでしばらく住んでいて、ヒゲの似合う「イケメン」だったということもある。免許をとったのは静岡に来る前に神奈川の大学近くの自動車学校でだった。静岡で既にケンメリに乗っていた同時代の男たちは、ワンランク上の「白馬の王子」に見えたものだ。「結婚前はケンメリでデートしたのよ」と遠い目でいう奥さんもいた。彼らはすでに、もっと高額なクルマを買える身分になっていても、結婚前のケンメリでのデートというのは映画みたいなひとときとなって脳裏に焼き付いているのだろう。自動車はタイヤが4つついた移動手段だが、単にそれ以上に心に焼きつく何かもあるようだ。