ivataxiのブログ

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吸殻

吸殻

 

オヤジは反面教師だったのだろうか?ぼくはタバコを吸わない珍しい学生だった。自宅のあちこちに缶入りピースが買い置きされていて、綺麗な紺色のパッケージと紫の煙に包まれた良い環境に育った。お陰で「受動喫煙歴17年ですね」と、診断された。ピースは又吉さんで今年有名になったお笑いユニットではなく、両切りタバコの名前だ。「両切り」というのは耳慣れない単語だろう。だって、現在コンビニなどで販売されているタバコの多くは吸口の部分がフィルターになっている。タバコを最後まで吸った人が「フィルターの所はまずい」という。こたつの上にタバコセットがあるが、それはお客様に出す特上のタバコがフタで隠され、美しいライターが置いてあり、時には近所のマッチだったりもする着火アイテムがある。また、狭いこたつの真四角の上面に居座るクリスタルまたはガラスのカット灰皿が重くでかく場所を占有する。座敷牢で部屋の親分が全部の畳を占領しているような様だ。灰皿はいつも綺麗に片付いていた?いやいや、まったく吸ったまま吸殻は山盛りだった。買い置きする日は給料日あとだったのだろう。当時は振込みではなく給料袋を持って来るご主人はその瞬間輝いたが、時と共にどんどん色褪せる。現在は振込みでカードは奥さんが握っているから奥さんはいつだって輝くが、ご主人は存在が限りなく透明に近いブルーな心境だ。ああ、吸殻の話。給料日が近い最も懐の寂しい時にはタバコが買えない。だから、タバコを吸うのをやめる・・訳ではなく、灰皿の上の山盛りの吸殻の中から比較的ましな物を動物的嗅覚で物色することになる。それでも見た目や品質に問題のある残りは、バラバラにほぐして中身だけをキセルに詰める。キセルはグーグルの画像検索で見てね。極悪なヤニと醜悪なタバコの煙を受動喫煙する日々がしばらく続く。そして晴れて給料日には買い置きの缶入りピースが美しく紺色に家庭を染めるという繰り返しであった。