ivataxiのブログ

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イトコと暮らした頃

昨年年末従兄弟が亡くなった。一緒に住んでいた時期が2~3年あった。ぼくは10才前後で彼は高校に上がったばかり。親の転勤で彼だけ大阪に残ったのだ。ぼくらの団地は四畳半一間と台所・六畳が二間だった。六畳の一間は両親・もう一間がぼくと弟、そして彼は四畳半だった。本当はぼくらの部屋にテレビがあったが、子供は早く寝なければいけないはずだった。「11pm」という、知らなければ知らなくても良い番組を彼はどうしても見たいと親を説得し、ぼくらもこの時ばかりは特別に遅くまで白黒でチャンネルを回すタイプのテレビを囲んだ。大橋巨泉という人がタキシードを来て、時折、目のやり場に困る美女たちが半裸で横切るが、もったいないのでしっかり目に焼き付ける。当時は録画という概念はなかった。この番組からビートたけしさんも所ジョージさんも有名になったように思う。従兄弟はキレると子供相手でも本気だった。でも本当は寸止めだったようにも思う。字が綺麗で、顔を見なければ繊細で女性のような筆跡だった。勉強のノートの端にはいつも平凡パンチなどに載っている男性のおしゃれな服装が描かれていた。「ぼくはテレビのカメラマンになりたいんや」といっていたが、まったくそうではない方向に進んだのではなかったか?小学生には買えないけれどもVANジャケットには憧れがあったのも、彼の部屋にたくさん積まれた平凡パンチとプレイボーイの影響だったろう。この四畳半には邪悪な甘い世界の裏側があった。学校では一番教えたくないすべてがそこにはあった。途中は会うこともなく、電話で声を聞く程度で、声というのは年を取らないから、高校生の坊主頭の印象しか残っていなかった。ともかく先月、お線香だけあげに行った。