ivataxiのブログ

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ブタのコマギレ100グラム

豚のコマギレ
19歳というのは鬼門だ。
ラグビー部合宿所の住み込み飯炊きのバイトを、いきなり3月にやめさせられた。
だって、次の後釜がすでにぼくの部屋に住むことが決まっているというのだ。
「聞いてないよ」などとギャグではなく涙も出ない。
東急東横線新丸子から田園都市線上野毛まで、
青森の友人の借りてくれたリヤカーを押して引っ越した。
上野毛は高級住宅街で、たまたま道を聞いた女性が
「ならウチで下宿しな」と、速攻だった。
問題は家賃だ。仕送りの3万円がすっかり下宿代に消える。
バイトをしなくては何も買えない。
合宿所を出た途端、週末の家庭教師もなくなったからお金は困った。
少しは蓄えがあり、でもすぐ底をついた。
上野毛のお風呂屋さんの裏方をした。お客さんが来る前にタイルをブラシで洗う。
魔女の宅急便のデッキブラシだ。
二子玉川だったかの高島屋の荷物出しのバイトで知り合った「ラベラーマン」に
「来年一緒に国立受けよう」と誘われた。
ラベラーとは、今ではPOSシステムに変わってしまったが、
以前は商品に値段をシールのような物にその場で印字する道具。
彼はバイトの中で一番ラベル内が早く「カチャカチャ」という音が32ビート位の速さだった。
自宅は豪奢でお父さんの収入は押して測るべしだが、
その家では国立以外は大学と認めないようだった。
高島屋の偉い人の息子さんもバイトに入ったが、周囲がチヤホヤしていて何を学んだのだろう?
恐らく大人になって偉くなってはいるだろうが。
結局、兵糧攻めに負けて埼玉のおじの家に逃げ出した。秋だった。
しばらく埼玉から神奈川まで長い通学をしたが、専門学校を中退した。